シクレストによる副作用

公開日:  最終更新日:2017/08/06

シクレストとは

シクレスト(SYCREST)とは、統合失調症のお薬です。

陽性症状と陰性症状の両方に効果があると言われていますが、特に妄想や幻覚等の陽性症状に効果が高いと報告されています。

主成分は、アセナピンマレイン酸塩(Asenapine Maleate)で、様々な受容体に作用することにより気持ちを落ち着け、意欲減退や感情鈍麻等を改善し心をバランスの取れた状態にする作用があると言われています。

様々な受容体に作用するため、MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)に分類されるお薬ですが、特にドーパミン受容体に対する作用が強いと言う特徴があります。

そのため、ドーパミンが引き起こす統合失調症の陽性症状である妄想や幻覚に効果があると言われています。

但し、ドーパミンを無暗に抑制すると、かえって陰性症状を引き起こすことになりますが、本剤は、さらにドーパミンを抑制する働きのあるセロトニン受容体にも作用するため、過度なドーパミン分泌を抑制すると同時に、適切な量に保つ作用が期待されます。

副作用も従来のお薬と比較して少ないと言われています。

適応症は以下の通りです。

・統合失調症

本剤の形状は舌下錠で、口の粘膜から有効成分が吸収されます。

舌の下で溶かして服用しますので、飲み込まない様に注意が必要です。

また、服用後10分間は、飲食やうがい、歯磨き等は控えて下さい。

本剤は、Meiji Seika ファルマ株式会社により製造販売されています。

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主な副作用

シクレストの主な副作用を、症例の報告の多い順に記載すると、以下の通りです。

・傾眠がみられる
・口の感覚鈍麻がみられる
・アカシジアがみられる
・錐体外路障害がみられる
・体重が増加する
・浮動性眩暈(めまい)がする

重大・重篤な副作用

重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。

重大・重篤レベル副作用リスト
副作用の名称 想定される症状等
悪性症候群(Syndrome malin) 無動緘黙(むどうかんもく:無言症。無動無言状態のこと)がみられる、強度の筋強剛(きんきょうごう:筋肉のこわばり)がみられる、嚥下困難になる、頻脈になる、血圧の変動がみられる、発汗等の症状が現れ、その後、発熱する場合がある。高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、ミオグロビン尿を伴う腎機能の低下がみられる、白血球が増加する、血清CK(CPK)値が上昇する
遅発性ジスキネジア 口をモグモグさせる、歯を食いしばる、噛む、顎を側方にずらす、唇をすぼめたり尖らせたりを繰り返す、舌を突き出す、舌を左右に揺らす、瞬きを繰り返す、額にしわを寄せる、肩をひそめる、しかめ面をする、手指を繰り返し屈伸する、腕を振り回す・ねじる、足踏み、タップする、体をゆする、くねらす、ねじる、呼吸困難になる、不規則呼吸がみられる等
肝機能障害 倦怠感の増大がみられる、食欲が低下する、呼吸困難になる、吐き気がする、常に眠い状態、黄疸がみられる、AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、γ-GTP値が上昇する、総ビリルビン値が上昇する、劇症肝炎になる等
アナフィラキシー 紅斑ができる、悪寒がする、口唇浮腫ができる、咽頭浮腫ができる、口内の違和感がある、かゆみがある、くしゃみする、顔面が紅潮する、熱感がある、吐き気がする、嘔吐する、尿意がある、便意がある、そう痒感がある、全身が発赤する、顔面や喉頭浮腫ができる、呼吸困難になる、痙攣(けいれん)する、血圧が低下する、喘鳴(ぜんめい)がきこえる、血管浮腫ができる、不快感がある、眩暈(めまい)がする、耳鳴がきこえる、発汗する等
ショック 血圧低下に伴い失神する、意識が消失する、チアノーゼがみられる、呼吸困難になる、胸内苦悶がある、冷感がある、嘔吐する、顔が赤くなる、痒みがある、蕁麻疹(じんましん)ができる、痺れる(しびれる)、動悸がする、息切れする等
舌腫脹 舌が大きい、腫れぼったい、むくむ、炎症がみられる、むくむ等
咽頭浮腫 嚥下困難になる、息苦しい、息を吸うとヒューヒュー音がする、呼吸困難になる、咳がでる、鼻汁がでる、くしゃみをする、呼吸粘膜が腫れる、窒息する等
高血糖(高血糖症) のどが渇く、身体がだるい、尿量が増加する、空腹感がある、皮膚が乾燥し痒い、風邪を引き易い、傷の治りが遅い等
糖尿病性ケトアシドーシス 口が渇く(喉のかわき)、多飲になる、倦怠感がある、悪心がある、嘔吐する、低体温になる、体重が減少する、血圧が低下する、頻脈になる、意識障害がある、糖尿病性ケトアシドーシスがみられる、高血糖高浸透圧状態になる、低血糖症になる、乳酸アシドーシスがみられる、激烈な腹痛(急性腹症)になる、胃痙攣(けいれん)をおこす等
糖尿病性昏睡 著しいのどの渇きがある、脱水をおこす、多尿になる、頻尿になる、だるい、食欲が低下する、吐き気がする、悪心がある、嘔吐する、腹痛がある、下痢する、ショック、昏睡になる
低血糖(低血糖症) 脱力感がある、冷や汗がでる、急激な空腹感がある、悪寒がする、動悸がする、手が震える、集中力が低下する、痙攣(けいれん)する、意識障害がある、低血糖性昏睡に至る例の報告もある
横紋筋融解症 手足肩を中心とした筋肉痛・こわばりがある、手足が痺れる(しびれる)、赤褐色の尿がでる、脱力感がある、CK(CPK)値が上昇する、血中及び尿中ミオグロビン値が上昇する等、急激な腎機能悪化を伴う場合がある
無顆粒球症 発熱する、咽頭痛がある、倦怠感がある、口内炎ができる等
白血球減少 風邪等の感染症にかかりやすい、風邪等が治りにくい
肺塞栓症 突然起こる息切れ、呼吸が速い、落ち着かない、鋭い胸の痛み、眩暈(めまい)がする、失神する、痙攣(けいれん)する、不整脈がみられる、血痰がでる、発熱する、足首や脚のむくみがみられる、脱力感がある、チアノーゼがみられる等
深部静脈血栓症 皮膚の発赤がみられる、胸の痛みがある、ふくらはぎの腫れ・痛み・圧痛・熱感、足首・脚・太ももの腫れ等がみられる等
痙攣(けいれん) 全身の筋肉がピクピクする、痺れる(しびれる)、チクチクと痛む、瞬間うとうとと眠くなる、失神する、錯乱する、脱力する、膀胱の調節機能が消失する、興奮状態が継続する、怒りっぽくなる、ぼんやりする、よろめく、吐き気がする、眩暈(めまい)がする、下肢のコントロールが不能になる、筋肉の付随現象がみられる等
麻痺性イレウス 腸管麻痺がおこる(食欲不振になる、悪心がある、嘔吐する、著しい便秘がある、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状がおこる)、強い腹痛がみられる、吐き気がする、吐く、ひどい便秘になる、おなかが膨れる等

 
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。

重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。

その他の副作用

その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。

その他の副作用リスト
副作用の部位名称等 副作用の名称、症状
血液及びリンパ系 好中球減少症になる
内分泌 高プロラクチン血症になる
代謝及び栄養 食欲亢進がみられる、脂質異常症になる、食欲が減退する、高脂血症になる、体液貯留がみられる
精神 激越がみられる、不眠症になる、攻撃性がみられる、不安になる、易刺激性がみられる、気分動揺がみられる、パニック発作をおこす、落ち着きのなさがみられる、睡眠障害になる、自殺念慮がある、錯乱状態になる、精神病性障害がみられる、悪夢をみる、躁病になる、うつ病になる
神経系 アカシジアがみられる、浮動性眩暈(めまい)がする、錐体外路障害がみられる、傾眠がみられる、味覚異常になる、頭痛がする、パーキンソニズムがみられる、鎮静する、振戦がみられる、運動緩慢になる、構語障害がみられる、ジスキネジアがみられる、ジストニアがみられる、感覚が鈍麻する、失神する、舌の麻痺がある、口下顎ジストニアになる、下肢静止不能症候群になる
調節障害がみられる、眼痛がする、眼球回転発作をおこす、霧視になる
心臓 動悸がする、洞性徐脈がみられる、頻脈になる、洞性頻脈がみられる、脚ブロックがみられる
血管 高血圧になる、低血圧になる、起立性低血圧になる
呼吸器、胸郭及び縦隔 呼吸困難になる、咽喉絞扼感がある、咽頭感覚鈍麻がみられる
胃腸障害 口の感覚が鈍麻する、便秘になる、悪心がある、口腔内に不快感がある、流涎過多になる、嘔吐する、口の錯感覚がみられる、口腔内潰瘍形成がみられる、腹部不快感がある、嚥下障害がみられる、舌痛がする、変色歯がみられる、口内炎ができる、口腔粘膜水疱形成がみられる
肝胆道系 肝機能異常がみられる
皮膚及び皮下組織 異汗性湿疹ができる、そう痒症になる、小水疱性湿疹ができる、多汗症になる、発疹ができる、脱毛症になる、顔面腫脹がみられる、蕁麻疹(じんましん)がでる、血管浮腫ができる、全身性皮疹ができる
筋骨格系及び結合組織 筋固縮がみられる、筋緊張がみられる、筋骨格硬直がみられる、四肢痛がする、筋肉痛になる、関節痛になる、筋痙縮がみられる、筋攣縮がみられる、関節腫脹がみられる、筋力が低下する
腎及び尿路 遺尿がみられる、尿失禁する
生殖系及び乳房 不規則月経がみられる、乳汁漏出症になる、無月経になる
免疫系 過敏症になる
一般・全身及び投与部位の状態 口が渇く、倦怠感がみられる、無力症になる、胸部不快感がある、疲労する、歩行障害がみられる、末梢性浮腫ができる、浮腫ができる、異常感がある、局所腫脹がみられる
臨床検査 体重が増加する、ALT(GPT)値が増加する、AST(GOT)値が増加する、血中CPK値が増加する、血中プロラクチン値が増加する、γ-GTP値が増加する、体重が減少する、血中コレステロール値が増加する、血中ブドウ糖値が増加する、血中インスリン値が増加する、血中トリグリセリド値が増加する、心電図QT延長がみられる、好酸球数が増加する、グリコヘモグロビン値が増加する、低比重リポ蛋白が増加する、尿中蛋白陽性がみられる、血中ALP値が増加する、心拍数が増加する、血圧が上昇する
その他 転倒する
過量投与 激越、錯乱状態、アカシジア、口腔顔面ジストニア、鎮静の症状及び無症候性心電図所見(徐脈、上室性波形及び心室内伝導遅延)

 

シクレストについて

本剤は、2016年に承認された統合失調症用の日本初の舌下錠です。

海外では、双極性障害にも利用されています。

持病やアレルギーのある方は事前に医師とご相談ください。

上記の通り、舌下錠なので、最初から飲み込まない様にし、舌の下で溶かして有効成分を口の粘膜で吸収させます。

そのため、服用後、10分程度は飲食や歯磨き等は控えてください。

以下の方は、基本的に禁忌なので、本剤の利用はできません。

・本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方
・昏睡状態の方
・バルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある方
・アドレナリンを投与中の方
・重度の肝機能障害のある方(Child-Pugh分類C)

以下の方は、このお薬を利用する際には注意が必要なので、医師とご相談ください。

・心・血管疾患、脳血管障害、低血圧又はこれらの既往歴のある方
・てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある方
・不整脈の既往歴のある方
・先天性QT延長症候群の方
・QT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の方
・自殺企図の既往、及び、自殺念慮を有する方
・高齢の方
・中等度の肝機能障害のある方(Child-Pugh分類B)
・糖尿病、又は、その既往歴のある方
・糖尿病の家族歴、高血糖、肥満等の糖尿病の危険因子を有する方
・パーキンソン病、又はレビー小体型認知症のある方
・妊婦の方
・妊娠している可能性のある方
・授乳婦の方
・小児等

以下の薬剤等との併用は、基本的に禁忌です。ご利用されている方は、飲み合わせにつきまして医師とご相談ください。

・アドレナリン
  ・ボスミン

以下の薬剤等と併用する際には相互作用があり、効果が増減したり、副作用を増強したりする可能性があるため、注意が必要なので、飲み合わせにつきまして医師とご相談ください。

・中枢神経抑制剤
  ・バルビツール酸誘導体等
・アルコール
・ドパミン作動薬
・降圧剤
・抗コリン作用を有する薬剤
・CYP1A2を阻害する薬剤
  ・フルボキサミン等
・パロキセチン

 

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