モルヒネによる副作用
モルヒネとは
モルヒネ(Morphine)とは、強い痛みを緩和するお薬です。アヘンアルカロイド系麻薬で、最も強い痛み止めの1つです。
製品名としては、オプソ、プレペノン、アンペック、カディアン、モルペス等があります。
本剤の主成分は、モルヒネ塩酸塩水和物(Morphine Hydrochloride Hydrate)で、以下の作用があります。
・身体全体に存在する痛みを起こさせるオピオイド受容体と結合する作用があります。この作用により、痛みを抑制する効果があります。
・脳にある咳中枢の興奮を抑制する作用があります。この作用により、鎮咳作用を発現します。
・消化管の運動や分泌を抑制する作用があります。この作用により、下痢を止める効果が発現します。
適応症は以下の通りです。
・激しい疼痛時における鎮痛・鎮静
・激しい咳嗽発作における鎮咳
・激しい下痢症状の改善及び手術後等の腸管蠕動運動の抑制
本剤は、主に癌の痛みに対して古くから世界中で利用されているお薬です。
モルヒネは、各社から様々な商品名称で製造販売されております。
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主な副作用
モルヒネの主な副作用は、以下の通りです。
・吐き気がする
・眠気がある
・便秘になる
重大・重篤な副作用
重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。
副作用の名称 | 想定される症状等 |
---|---|
薬物依存 | 大量連用により薬物依存になる、薬をやめられない等 |
退薬症候 | あくびがでる、くしゃみをする、流涙がある、発汗がある、悪心がある、嘔吐する、下痢する、腹痛になる、散瞳がみられる、頭痛がする、不眠になる、不安になる、せん妄がみられる、振戦がみられる、全身の筋肉痛がある、関節痛がある、呼吸促迫がみられる等 |
呼吸抑制 | 頭痛がする、眩暈(めまい)がする、動悸がする、息切れする、不安感がある、判断力の鈍化がみられる |
錯乱 | 外部状況に対し適した対応が出来ない状態、話や動作にまとまりがない |
譫妄(せんもう) | イライラする、疲れが取れない、不眠になる、強い倦怠感がある、下痢する、動悸がする等 |
無気肺 | チアノーゼがみられる、胸の痛みがある、呼吸困難になる等 |
気管支痙攣(きかんしけいれん) | 胸がつまる感じがする、喘鳴(ぜんめい)が聞こえる、呼吸困難になる等 |
喉頭浮腫 | のどが詰まる、息苦しくなる、息を吸い込む際にヒューヒュー音がする、声が出にくい、呼吸困難になる、かゆみがある、痺れる(しびれる)、吐き気がする、嘔吐する、鼻水がでる、腹痛になる等 |
麻痺性イレウス | 腸管麻痺がおこる(食欲不振になる、悪心がある、嘔吐する、著しい便秘がある、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状がおこる)、強い腹痛がみられる、吐き気がする、吐く、ひどい便秘になる、おなかが膨れる等 |
中毒性巨大結腸症(ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう) | 急速な大腸炎の悪化がみられる、大腸動作が停止する、大腸内に毒素やガスが溜まる、大腸が風船のように膨らむ、全身の中毒症状がみられる、38度以上の発熱がある、脈拍が120以上になる、白血球が増多する(>10500 x 103/mL)、貧血になる、脱水がみられる、意識障害がおこる、電解質異常がみられる、低血圧になる |
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。
重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。
その他の副作用
その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。
副作用の部位名称等 | 副作用の名称、症状 |
---|---|
循環器 | 不整脈がみられる、血圧変動がみられる、顔面潮紅がみられる |
精神神経系 | 眠気がある、眩暈(めまい)がする、不安になる、不穏になる、興奮する、視調節障害がみられる、発汗する |
消化器 | 悪心がある、嘔吐する、便秘になる、口が渇く |
過敏症 | 発疹がでる、そう痒感がある |
投与部位 | 発赤がみられる、腫脹がみられる、硬結がみられる、疼痛がある |
その他 | 排尿障害がみられる、尿閉がみられる、頭蓋内圧の亢進がみられる、脱力する |
過量投与 | 呼吸抑制がみられる、意識不明になる、痙攣(けいれん)する、錯乱する、血圧が低下する、重篤な脱力感がある、重篤な眩暈(めまい)がする、嗜眠がみられる、心拍数が減少する、神経過敏になる、不安になる、縮瞳がみられる、皮膚冷感がある等 |
モルヒネについて
本剤の利用開始に伴い、嘔吐する方が多いとの報告があります。嘔吐は約2週間程度で治まって来ますが、必要な場合、制吐薬を併用してください。
持病やアレルギーのある方は事前に医師とご相談ください。
眠気をもよおしたり、ふらつくことがあるので、本剤を利用中は、車の運転や危険を伴う作業等は控えてください。
アルコール(飲酒)は、副作用が出やすくなるため、控えてください。
以下の方は、基本的に禁忌なので、本剤の利用はできません。
・重篤な呼吸抑制のある方
・気管支喘息発作中の方
・重篤な肝障害のある方
・慢性肺疾患に続発する心不全の方
・痙攣(けいれん)状態(てんかん重積症、破傷風、ストリキニーネ中毒)にある方
・急性アルコール中毒の方
・アヘンアルカロイドに対して過敏症のある方
・出血性大腸炎の方
以下の方は、原則禁忌です。
・細菌性の下痢のある方
以下の方は、このお薬を利用する際には注意が必要なので、医師とご相談ください。
・心機能障害のある方
・呼吸機能障害のある方
・肝機能障害のある方
・腎機能障害のある方
・脳に器質的障害のある方
・ショック状態にある方
・代謝性アシドーシスのある方
・甲状腺機能低下症(粘液水腫等)の方
・副腎皮質機能低下症(アジソン病等)の方
・薬物依存の既往歴のある方
・高齢の方
・妊婦の方
・妊娠している可能性のある方
・授乳婦の方
・小児等
・衰弱している方
・前立腺肥大による排尿障害、尿道狭窄、尿路手術術後の方
・器質的幽門狭窄、麻痺性イレウス又は最近消化管手術を行った方
・痙攣(けいれん)の既往歴のある方
・胆嚢障害及び胆石のある方
・重篤な炎症性腸疾患のある方
・ ジドブジン(アジドチミジン)を投与中の方
以下の薬剤等と併用する際には相互作用があり、効果が増減したり、副作用を増強したりする可能性があるため、注意が必要なので、医師とご相談ください。
・中枢神経抑制剤
・フェノチアジン系薬剤
・バルビツール酸系薬剤等
・吸入麻酔剤
・MAO阻害剤
・三環系抗うつ剤
・β遮断剤
・アルコール
・クマリン系抗凝血剤
・ワルファリン
・抗コリン作用を有する薬剤
・ジドブジン
・アジドチミジン
・ブプレノルフィン