ハルシオンによる副作用
ハルシオンとは
ハルシオン(Halcion)とは、睡眠導入剤です。抗不安剤としても利用されております。
本剤の主成分は、トリアゾラム(triazolam)で、神経細胞の興奮を抑制するベンゾジアゼピン受容体に作用し、神経細胞の働きを抑制することで、睡眠に誘う効果が期待されます。
服用後は、速やかに寝具の中に入る必要があります。本剤を服用した後、入眠までの記憶がない場合や、中途覚醒して記憶がない場合があるからです。(半減期は約2.9時間、血液中での薬濃度のピークは約1時間後)
適応症は以下の通りです。
・不眠症
・麻酔前投薬
ハルシオンは、様々な問題を孕みつつ、その効果と副作用の間で、世界中の国々で議論されて来たお薬です。
詳しいことは、本ページの後半に記載しております。
本剤は、ファイザー株式会社により製造販売されています。
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主な副作用
ハルシオン(Halcion)の主な副作用を、症例の報告の多い順に記載すると、以下の通りです。
・めまい
・ふらつき
・眠気
・倦怠感
・頭痛
・頭重
上記の症状は、重大な副作用ではありませんが、ハルシオンの服用時には、多く報告される症状です。
以下の副作用は、上記の副作用ほど頻度は高くありませんが、本人や周囲にとって様々な辛い要因になる副作用に該当します。
(薬物依存、離脱症状)
・長期間の連用により、薬に依存する体質になり、止めにくくなります。また、急激な服用量の減少や中止により、離脱症状が発症する場合があります。
症状としては、眠れない、譫妄(せんもう)状態になる、イライラする、不安感がある、振戦(ふるえ)が起こる、痙攣(けいれん)する、幻覚が見える、妄想する等があります。
この様な症状を防止するためにも、医師から指示された服用量を守るとともに、服用を止める場合にも、医師と相談の上、段階的に減少させる必要があります。
(精神症状)
・刺激興奮の状態になると、興奮し、眠れなくなり、もうろうとした状態になったり、取り乱したりします。
・錯乱状態になると、自分の居場所や、時間などが分からなくなります。話や動作に一貫性がなくなり、周囲の状況に対して、適切な対応ができなくなります。通常、高齢者に多い症状です。
・攻撃性が出ると、自分や周囲の人に対して、攻撃し傷つける行動をとる場合があります。
・夢遊症状(夢遊病)になると、寝ている状態なのに、むっくり起きて周囲を徘徊し、そのまま外出したり、車の運伝までしたりします。また、食べ物を食べたりします。その際、本人の記憶がない場合が多く、本人にとってもショックな出来事になります。
・幻覚は、実在しないものが見えたり、聴こえたり、感じたりする症状が現れます。
・妄想は、現実では有り得ないこと、間違っていることを事実と思い込んでしまったりする症状です。
・激越の症状は、感情や声等が激しく高ぶり、荒々しい状態になります。周囲もビックリしてしまいます。
(呼吸抑制等)
・呼吸抑制は、呼吸回数の減少、頭痛、めまい、息切れなどの症状が現れます。
・極端に呼吸機能が低下している方が服用した場合、炭酸ガスナルコーシス(CO2ナルコーシス)が発生する可能性があります。症状としては、呼吸不全、意識障害、頭痛、発汗などの症状が現れます。このような症状が発生した際には、気道を確保すると共に、換気を行ってください。
上記の様な症状が見られた場合には、本人にとっても周囲にとっても辛いため、服用を中止し、速やかに医師と相談の上、対処してください。
尚、妊婦や妊娠している可能性のある方は、医師と相談し、なるべくなら服用を避ける様にしてください。妊娠された方が服用して出生した新生児に、奇形を持った障害児が発現する割合が高いとの報告があります。
その他にも、新生児が、哺乳困難になる、嘔吐する、活動低下になる、筋緊張低下が起こる、過緊張が起こる、嗜眠になる、傾眠になる、呼吸抑制を起こす、無呼吸になる、チアノーゼを起こす、易刺激性がある、神経過敏になる、振戦(ふるえ)をおこす、低体温になる、頻脈になる等の症状が報告されております。
尚、お酒(アルコール)を飲むと、ハルシオンの中枢神経抑制作用が強く現れ、精神機能や知覚機能、運動機能が低下する場合があります。アルコールは、控えてください。
重大・重篤な副作用
重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。
副作用の名称 | 想定される症状等 |
---|---|
ショック | 血圧低下に伴い失神する、意識が消失する、チアノーゼがみられる、呼吸困難になる、胸内苦悶がある、冷感がある、嘔吐する、顔が赤くなる、痒みがある、蕁麻疹(じんましん)がでる、痺れる(しびれる)、動悸がする、息切れする等 |
アナフィラキシー様症状 | 紅斑ができる、悪寒がする、口唇浮腫ができる、咽頭浮腫ができる、口内の違和感がある、かゆみがある、くしゃみする、顔面が紅潮する、熱感がある、吐き気がする、嘔吐する、尿意がある、便意がある、そう痒感がある、全身が発赤する、顔面や喉頭浮腫ができる、呼吸困難になる、血圧が低下する、喘鳴(ぜんめい)がきこえる、血管浮腫ができる、不快感がある、眩暈(めまい)がする、耳鳴がきこえる、発汗する等 |
薬物依存 | 大量連用に伴い薬物への依存が発現する、薬をやめられなくなる |
離脱症状 | せん妄状態になる、痙攣発作(けいれんほっさ)が起こる、振戦(ふるえ)が起こる、幻覚がおこる、不眠になる、不安になる、妄想する等 |
精神症状 | 刺激興奮、錯乱、攻撃性、夢遊症状、幻覚、妄想、激越等の精神症状が発現する場合がある |
錯乱 | 外部の状況に対して適した対応が出来なくなる、話や動作にまとまりがなくなる |
刺激興奮 | 興奮する、取り乱す、不眠になる、もうろう状態となる等 |
攻撃性 | 自分や他人に対して攻撃して傷つける行動をする等 |
幻覚 | 実在しない何かが聴こえる(幻聴)、見える(幻視)、感じる(体感幻覚)等 |
妄想 | 現実では有り得ないこと、間違っていることを事実と思い込む等 |
激越 | 高ぶった状態になる、感情や声等が激しくなる、荒々しい状態等 |
夢遊症状(夢遊病) | ドアの外へ出て行く、就寝中に突然起きて辺りを歩き回る、服を着る、服を脱ぐ、車を運転する、ものを食べる等。これらの行動を本人は記憶がない等 |
呼吸抑制 | 動悸がする、不安感がある、頭痛がする、めまいがする、息切れする、判断力が鈍化する等 |
一過性前向性健忘(もうろう状態) | 途中で覚醒した時の事を覚えていない、服薬後入眠までの記憶がない、翌朝起床した後の一定時間の事の記憶がない |
肝機能障害 | 食欲が低下する、倦怠感が増大する、呼吸が困難になる、吐き気がする、常に眠い状態、黄疸が出る等 |
肝炎 | 高熱が出る、黄色い尿が出る、白目になったり皮膚が黄色くなる、倦怠感が増大する、淡黄色の便が出る等 |
黄疸 | 全身に脱力感がある、皮膚や白目が黄色くなる、下痢する、38度から39度の発熱がある、ブツブツ状の発疹ができる等 |
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。
重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。
その他の副作用
その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。
副作用の部位名称等 | 副作用の名称、症状 |
---|---|
循環器 | 血圧が上昇する、動悸がする、胸部圧迫感がある、血圧が降下する |
精神神経系 | ふらつく、眠気がする、めまいがする、頭痛がする、頭重がみられる、不安になる、眠れない、イライラする、協調運動失調になる、不快感がある、舌がもつれる、言語障害が起こる、見当識障害がみられる、意識が混濁する、耳鳴がする、視覚異常になる(霧視、散瞳、羞明、眼精疲労等)、多夢がみられる、魔夢がみられる、知覚が減退する、転倒する、多幸症になる、鎮静する等 |
骨格筋 | 倦怠感がある、脱力感がある等の筋緊張低下症状になる |
肝臓 | AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、γ-GTP値が上昇する、Al-P値が上昇する |
消化器 | 口が渇く、腹痛がある、食欲不振になる、悪心がある、嘔吐する、下痢する、心窩部不快感がある、便秘になる |
過敏症 | 発疹ができる、そう痒がある |
その他 | 味覚が変化する、尿失禁する、便失禁する、皮下出血がみられる、尿閉になる、CK(CPK)値が上昇する |
過量投与 | 傾眠がみられる、錯乱する、協調運動障害がみられる、不明瞭言語を生じる、昏睡に至る。悪性症候群がみられる(無動緘黙、強度の筋強剛、嚥下困難、頻脈、血圧の変動、発汗等)、呼吸抑制がみられる、無呼吸になる、痙攣発作がおこる等、尚、死亡例の報告もある |
ハルシオンについて
持病やアレルギーのある方は事前に医師とご相談ください。
夜間に仕事をする等、起きている必要のある方は医師とご相談ください。
アルコール(飲酒)は、薬の作用を増強する場合があるため控えてください。
長期の連用は避け、服用は必要最小限にとどめること。
以下の方は、基本的に禁忌なので、本剤の利用はできません。
・本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方
・急性狭隅角緑内障のある方
・重症筋無力症の方
・以下の薬剤を投与中の方
・イトラコナゾール
・フルコナゾール
・ホスフルコナゾール
・ボリコナゾール
・ミコナゾール
・HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、リトナビル等)
・エファビレンツ
・テラプレビル
以下の方は、原則禁忌です。
・肺性心
・肺気腫
・気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下している方
以下の方は、このお薬を利用する際には注意が必要なので、医師とご相談ください。
・心障害のある方
・肝障害、又はその既往歴のある方
・腎障害のある方
・脳に器質的障害のある方
・高齢の方
・衰弱している方
・妊婦の方
・妊娠している可能性のある方
・授乳婦の方
・小児等
以下の薬剤等との併用は、基本的に禁忌です。ご利用されている方は、飲み合わせにつきまして医師とご相談ください。
・イトラコナゾール(イトリゾール)
・フルコナゾール(ジフルカン)
・ホスフルコナゾール(プロジフ)
・ボリコナゾール(ブイフェンド)
・ミコナゾール(フロリード)
・HIVプロテアーゼ阻害剤
・インジナビル(クリキシバン)
・リトナビル(ノービア)等
・エファビレンツ(ストックリン)
・テラプレビル(テラビック)
以下の薬剤等と併用する際には相互作用があり、効果が増減したり、副作用を増強したりする可能性があるため、注意が必要なので、飲み合わせにつきまして医師とご相談ください。
・アルコール(飲酒)
・中枢神経抑制剤
・フェノチアジン誘導体
・バルビツール酸誘導体等
・エリスロマイシン
・クラリスロマイシン
・ジョサマイシン
・シメチジン
・ジルチアゼム
・メシル酸イマチニブ
・キヌプリスチン
・ダルホプリスチン
・リファンピシン
・モノアミン酸化酵素阻害剤
ハルシオンの副作用に関するこれまでの事実
ハルシオンに関する副作用については、販売が開始された1970年代より世界中で様々な話題と賛否両論があります。
ここでは、時系列に、各国での事実を記載しておきます。
オランダでは、1977年11月に、ハルシオンが、承認されました。
しかし、1979年7月、オランダ医師「C.Van Der Kroef」により、ハルシオンの副作用として「記憶喪失」の症状が報告されました。
このことにより、オランダでは、翌8月に、ハルシオンの販売が中止されております。
イギリスや、ヨーロッパ諸国では、オランダで発生した問題が懸念され、ハルシオンの利用について消極的な国が多くなりました。(イギリス、オランダ、ノルウェー、フィンランド等)
日本、及び、米国では、1982年11月に承認、販売開始されています。
1991年2月に、「protocol321」の虚偽が発覚し、また「protocol6415」の捏造も発覚しております。
これはつまり、ハルシオンの臨床データについて、製薬会社の責任が問われたと言うことです。
その後、ハルシオンの問題点を曝け出す様な報道が続きます。
同年8月に、米国ニューズウィーク誌上で、「ハルシオンが銃事件に関連」と云う記事が掲載されております。
同年10月に、英国BBC放送で、「ハルシオンの悪夢」との番組が放映されます。この影響で、英国も、6ヶ月間、ハルシオンの販売停止が実施されました。
同年11月に、TIP誌上、「睡眠薬ハルシオンの安全性」で、注意を喚起しています。
同年12月に、FDAはアップジョン社の不正について、調査を開始しております。
ここまでで分かる通り、欧米では、ハルシオンの負の面、つまり副作用を巡る報道や調査がなされております。
日本は、1992年3月に、当時の厚生省より「医薬品副作用情報113号」で、「欧米の動向に鑑み安全性の徹底」のため、「使用上の注意」の記載で、改訂を指示しております。
同年7月に、「Public Citizen」は、ハルシオンの承認を取り消す様、要請しています。
以降も、様々な、勧告、報告書が提出されており、2007年6月に、ファイザー社が、添付文書の改訂を行い、「夢遊症状などの睡眠随伴症状」が発生することがあることを、「警告」の事項として追加しました。
以上、ハルシオンは、世界の様々な国で、副作用に関する議論がなされ、問題視されてきております。
承認取消されたり、販売中止になった国もあります。
それだけ副作用について、十分注意をする必要のある薬であること、危険な薬であることを認識する必要があります。
ハルシオンの効果については、半減期が約3時間と短いため、夜間に中途覚醒した場合、かえって眠れない方も多いと聞きます。
これは本末転倒であり、睡眠薬を服用して眠れなくなると云うことです。
また、記憶障害等の報告は、国によって価値観が異なり、対処が様々です。
日中に薬品成分の血中濃度が低下するため、イライラしたり不安を感じたりして、ハルシオンの服用頻度が増加し、依存症になる場合もあります。
依存症の場合、前記した様に、錯乱状態、不安、興奮、抑うつ状態の悪化等の症状が起こり、精神状態に影響します。
これらの副作用発生確率は、もちろん低いです。しかし、その内容については、社会への影響も大きいものがあり、世界中の各国で議論されています。
承認用に申請したデータが、ねつ造されたものであると言われていることもあり、欧米諸国においては、販売停止、臨床データの見直しが進んでいます。
日本は、旧厚生省が、これらの問題に対して対応した形跡は、皆無に等しい状態です。ハルシオンの利用が容易に継続されています。
次に、ハルシオンの消費量です。
全世界で消費されている量の、実に約60%が日本で消費されているとの推定が報告されています。
これは、世界の常識に反した状態で、日本でハルシオンが消費されていることを物語っています。
日本の医師にも、これらの状況を考慮し、ハルシオンの処方をしない医師もいます。
患者としては、これらの状況を認識しておく必要があります。もしハルシオンが処方されたなら十分注意すること。もし気になる様なら、医師に相談しましょう。