アバスチンによる副作用

公開日:  最終更新日:2017/08/11

アバスチンとは

アバスチン(AVASTIN)とは、抗がん剤です。

比較的新しいタイプの抗悪性腫瘍剤で、世界初の血管新生阻害薬として2007年4月に承認されたお薬です。

癌細胞が増殖する際、栄養供給用に新しい血管が作られますが、本剤はこの血管の新生を抑制します。

主な成分である、ベバシズマブ(遺伝子組換え)(Bevacizumab(Genetical Recombination))は、血管新生を促進するために癌細胞が分泌するVEGFと言われる蛋白質と結合することにより、新しい血管生成を抑制します。

この作用により、癌細胞の増殖を弱める効果が期待されます。

適応症は以下の通りです。

・治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
・扁平上皮癌を除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
・卵巣癌
・手術不能又は再発乳癌
・悪性神経膠腫

本剤は、中外製薬株式会社により製造販売されています。

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主な副作用

アバスチンの主な副作用を、症例の報告の多い順に記載すると、以下の通りです。

・好中球が減少する
・白血球が減少する
・出血する
・高血圧になる
・神経毒性がみられる
・疲労・けん怠感がある
・食欲減退がみられる
・悪心がある
・口内炎ができる
・脱毛症になる
・血小板が減少する
・尿蛋白が陽性になる

重大・重篤な副作用

重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。

重大・重篤レベル副作用リスト
副作用の名称 想定される症状等
ショック 血圧低下に伴い失神する、意識が消失する、チアノーゼがみられる、呼吸困難になる、胸内苦悶がある、冷感がある、嘔吐する、顔が赤くなる、痒みがある、蕁麻疹(じんましん)ができる、痺れる(しびれる)、動悸がする、息切れする等
アナフィラキシー様症状 紅斑ができる、悪寒がする、口唇浮腫ができる、咽頭浮腫ができる、口内の違和感がある、かゆみがある、くしゃみする、顔面が紅潮する、熱感がある、吐き気がする、嘔吐する、尿意がある、便意がある、そう痒感がある、全身が発赤する、顔面や喉頭浮腫ができる、呼吸困難になる、血圧が低下する、喘鳴(ぜんめい)がきこえる、血管浮腫ができる、不快感がある、眩暈(めまい)がする、耳鳴がきこえる、発汗する等
消化管穿孔(しょうかかんせんこう) 急激な腹痛がある、ショック症状になる、遊離ガスが横隔膜直下に溜まる、腹膜炎になる、大量出血する、敗血症になる等
瘻孔 消化管瘻(腸管皮膚瘻、腸管瘻、気管食道瘻等)又は消化管以外の瘻孔(気管支胸膜瘻、泌尿生殖器瘻、胆管瘻等)があらわれることがある等
創傷治癒遅延 創傷治癒に影響を及ぼす可能性が考えられ、創傷治癒遅延による創し開、及び術後出血等の合併症があらわれることがある等
出血 腫瘍関連出血を含む、消化管出血(吐血、下血)、肺出血(血痰・喀血)、脳出血等があらわれる場合がある。鼻出血、歯肉出血、膣出血等の粘膜出血があらわれることがある等
血栓塞栓症 脳血管発作、一過性脳虚血発作、心筋梗塞、狭心症、脳虚血、脳梗塞等の動脈血栓塞栓症、及び深部静脈血栓症、肺塞栓症等の静脈血栓塞栓症があらわれることがある等
高血圧性脳症、高血圧性クリーゼ コントロール不能の高血圧、高血圧性脳症、高血圧性クリーゼが発現する等
高血圧性脳症 後頭部から後頸部にかけての激しい頭痛がする、悪心がある、嘔吐する、興奮する、痙攣(けいれん)する、意識障害がある、両側性の視力が低下する、不安感がある、失見当識になる、昏睡状態になる、全身の強直性痙攣(けいれん)になる、クレアチニン値が上昇する等
高血圧性クリーゼ(高血圧性緊急症) 血圧が急激に高くなる、脳・心臓・腎臓等の機能に緊急性を要する重大な障害がおこる等
可逆性後白質脳症症候群(RPLS) 高血圧になる、頭痛がする、覚醒低下になる、意識障害になる、精神状態が変化する、痙攣(けいれん)する、皮質盲を含む視力障害がある、後頭及び頭頂葉領域を中心に広範囲な浮腫性病変等がある
ネフローゼ症候群 高度の浮腫が発生する、大量のたんぱく尿が出る、尿が泡立っている、まぶたや下肢がむくむ、胸水がある、腹水がある、心嚢水がある、息切れがする、呼吸が困難になる、吐き気がする、嘔吐する、体重が増加する、免疫力が低下する
骨髄抑制 汎血球が減少する、好中球が減少する、貧血になる、白血球が減少する、血小板が減少する、出血がみられる、発熱する、悪寒がする、口中の白い斑点がみられる、点状出血(手足の赤い点)がみられる、紫斑ができる、鼻血がでる、歯茎の出血がみられる、水便になる、脱力感がある等
感染症 肺炎、敗血症、壊死性筋膜炎等の感染症になる。壊死性筋膜炎については、創傷治癒遅延、消化管穿孔、瘻孔に続発した例が報告されている等
うっ血性心不全 心臓の収縮力が低下する、血液送出量が低下する、心臓や肺等の静脈がうっ血する、動悸がする、息切れする、就寝中に咳がでる、呼吸困難になる等
間質性肺炎 発熱する、咳嗽(がいそう)がみられる、呼吸困難になる、胸部X線異常がみられる、好酸球が増多する、動悸がする、息切れする等
血栓性微小血管症 血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群等の血栓性微小血管症があらわれる、破砕赤血球を伴う貧血、血小板減少、腎機能障害等が発生する等

 
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。

重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。

その他の副作用

その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。

その他の副作用リスト
副作用の部位名称等 副作用の名称、症状
精神神経系 神経毒性がみられる(末梢性感覚ニューロパシー、末梢性運動ニューロパシー、感覚神経障害等)、味覚異常がある、頭痛がする、不眠症になる、浮動性眩暈(めまい)がする、神経痛になる、体位性眩暈(めまい)がする、不安になる、嗅覚錯誤がある、失神する、構語障害がある、傾眠がみられる、痙攣(けいれん)する
消化器 食欲減退がみられる、悪心がある、口内炎ができる、下痢する、嘔吐する、便秘になる、胃腸障害がある、腹痛になる、歯肉炎になる、口唇炎になる、胃不快感がある、歯周病になる、胃炎になる、消化不良になる、消化管潰瘍になる、歯痛がある、痔核がみられる、歯肉痛がある、齲歯がみられる、腸炎になる、腸閉塞になる、逆流性食道炎になる、胃腸炎になる、舌炎になる、肛門周囲痛がある、歯の脱落がみられる
泌尿器 尿蛋白が陽性になる、尿中血が陽性になる、BUN値が増加する、血中クレアチニン値が増加する
肝臓 肝機能異常がみられる(AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、γ‐GTP値が増加する、LDH値が増加する等)、血中ビリルビン値が増加する
血液・凝固 リンパ球数が減少する、フィブリンDダイマー値が増加する、INR値が増加する、フィブリノゲン値が増加する、白血球数が増加する、APTT延長がみられる、好中球数が増加する、プロトロンビン時間延長がみられる
心・血管系 高血圧になる、上室性頻脈がみられる、動悸がする、洞性頻脈になる
皮膚 脱毛症になる、発疹ができる、皮膚変色がみられる、剥脱性皮膚炎になる、色素沈着がみられる、手足症候群になる、爪の障害がある、そう痒症になる、紅斑ができる、蕁麻疹(じんましん)がでる、皮膚乾燥がみられる、皮膚剥脱がある、皮膚炎になる、爪囲炎になる、爪色素沈着がみられる、過角化がみられる
筋・骨格 関節痛がある、筋痛がある、背部痛がある、四肢痛がある、筋骨格硬直がみられる、筋骨格痛がある(肩部痛、殿部痛等)、筋力が低下する、側腹部痛がある
呼吸器 肺高血圧症になる、しゃっくりがでる、発声障害がある、咽頭喉頭痛がある、鼻漏がみられる、咳嗽(がいそう)がでる、呼吸困難になる、鼻炎になる、気管支炎になる、低酸素症になる
眼障害がみられる、結膜炎になる、流涙が増加する、霧視がみられる
代謝 血中コレステロール値が増加する、血中アルブミン値が減少する、血中リン値が減少する、血中ナトリウム値が減少する、血中尿酸値が増加する、高カリウム血症になる、総蛋白が減少する、高脂血症になる、血中カルシウム値が減少する、尿中ブドウ糖が陽性になる、高カルシウム血症になる、高血糖になる、血中クロール値が減少する、高マグネシウム血症になる、低マグネシウム血症になる、血中ナトリウム値が増加する、低カリウム血症になる
その他 疲労・けん怠感がある、発熱する、鼻中隔穿孔がみられる、卵巣機能不全になる(無月経等)、上気道感染がみられる(鼻咽頭炎等)、体重が減少する、Al‐P値が上昇する、末梢性浮腫ができる、潮紅がみられる、CRP値が上昇する、注射部位反応がみられる(疼痛等)、膀胱炎になる、無力症になる、ほてりがある、体重が増加する、胸痛がある、胸部不快感がある、カテーテル関連合併症になる(感染、炎症等)、膿瘍がみられる、口腔ヘルペスができる、脱水になる、耳鳴がする、回転性眩暈(めまい)がする、毛包炎になる、顔面浮腫ができる、熱感がある、静脈炎になる、帯状疱疹ができる、感染性腸炎になる、耳不快感がある、不規則月経がある、疼痛がある、尿路感染がある
過量投与 重度の片頭痛

 

アバスチンについて

本剤は通常の抗がん剤と比較し、作用機序が異なるため、他の抗がん剤との併用が可能です。

本剤の利用に伴い以下のリスクが高まり死亡に至る例も報告されているため注意が必要です。

・腫瘍関連出血
・肺出血(喀血)
・脳血管発作
・一過性脳虚血発作
・心筋梗塞
・狭心症
・脳虚血
・脳梗塞等の動脈血栓塞栓症
・高血圧性脳症
・高血圧性クリーゼ
・可逆性後白質脳症症候群

以下の方は、基本的に禁忌なので、本剤の利用はできません。

・本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方
・喀血(2.5mL以上の鮮血の喀出)の既往のある方

以下の方は、このお薬を利用する際には注意が必要なので、医師とご相談ください。

・消化管など腹腔内の炎症を合併している方
・大きな手術の術創が治癒していない方
・脳転移を有する方
・先天性出血素因、凝固系異常のある方
・抗凝固剤を投与している方
・血栓塞栓症の既往のある方
・高血圧症の方
・うっ血性心不全又は冠動脈疾患などの重篤な心疾患のある方
・高齢の方
・妊婦の方
・妊娠している可能性のある方
・授乳婦の方
・小児等

副作用の中でも血栓症と消化管穿孔は致命的な状況も想定されますので、症状に充分注意する必要があります。

 

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