抑肝散(ヨクカンサン)による副作用
抑肝散(ヨクカンサン)とは
抑肝散(ヨクカンサン)とは、神経の高ぶりを抑制するお薬です。
ツムラ54番とも言われ、効能が実証されている安全・安心な漢方薬です。
主成分としては、次の7種類の生薬エキスが配合されています。
・釣藤鈎(チョウトウコウ)
鎮静作用、抗痙攣作用、解熱作用が期待されます。
・紫胡(サイコ)
解熱作用、消炎作用、鎮痛作用、鎮静作用、抗ストレス、抗菌作用、抗ウイルス作用が期待されます。
・白朮・蒼朮(ビャクジュツ・ソウジュツ)
健胃作用、利尿作用、発汗作用が期待されます。
・茯苓(ブクリョウ)
利尿作用があり、余分な水分を排出し、浮腫みを解消する効果が期待されます。
鎮静作用もあるため、イライラを鎮め、ストレス性の皮膚トラブルの改善が期待されます。
健胃作用や抗めまい作用も報告されています。
・当帰(トウキ)
補血作用、駆血作用、月経調整作用、潤腸作用が期待されます。
・川芎(センキュウ)
補血作用、駆血作用、月経調整作用、鎮痛作用が期待されます。
・甘草(カンゾウ)
鎮痛作用、抗痙攣作用、鎮咳作用が期待されます。
釣藤鈎が効果の主役と言われており、セロトニンを増加させる作用(5HT1A受容体部分作動薬)が、報告されています。
適応症は以下の通りです。
・虚弱な体質で神経がたかぶる方の次の諸症
・神経症
・不眠症
・小児夜なき
・小児疳症
主に乳幼児や子供向けに処方されるお薬ですが、広く精神疾患や神経疾患の補助的なお薬として処方されています。
また、認知症の以下の諸症状に処方されることもあります。
・興奮
・怒り
・徘徊
・不眠
本剤は、株式会社ツムラをはじめ、高砂薬業株式会社、大杉製薬株式会社、クラシエ薬品株式会社、大峰堂薬品工業株式会社、小太郎漢方製薬株式会社等により製造販売されています。
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主な副作用
抑肝散(ヨクカンサン)の主な副作用は、以下の通りです。
・むかつきがみられる
・食欲不振になる
漢方薬なので副作用は少なく、眠くなる等の副作用はありません。
重大・重篤な副作用
重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。
副作用の名称 | 想定される症状等 |
---|---|
間質性肺炎 | 発熱する、咳嗽(がいそう)がみられる、呼吸困難になる、胸部X線異常がみられる、好酸球が増多する、動悸がする、息切れする、肺音の異常(捻髪音)がある等 |
偽アルドステロン症 | 低カリウム血症になる、血圧上昇がみられる、ナトリウムや体液の貯留がみられる、浮腫(むくみ)ができる、体重増加がみられる、手足が痺れ痛む、筋肉が震える・ピクつく、力が入らない等 |
心不全 | 呼吸困難、息苦しい、むくみがでる、咳嗽(がいそう)がみられる、頻尿になる、起座呼吸(起き上がって深く急な呼吸をする)がみられる、疲労感がある、体力が低下する、眠気がある、錯乱する、見当識障害がみられる、足、足首、脚、肝臓、腹部に体液がたまり腫れる・むくみが出る、吐き気がする、食欲不振になる、息切れする、あえぐ、喘鳴(ぜんめい)がきこえる、S3ギャロップがみられる、駆出率低下がみられる、末梢性浮腫ができる等 |
ミオパチー | 手足のしびれ感や痛みがある、足がだるい、低い椅子から立てない、転びやすい、腕が上げ辛い等 |
横紋筋融解症 | 手足肩を中心とした筋肉痛・こわばりがある、手足が痺れる(しびれる)、赤褐色の尿がでる、脱力感がある、CK(CPK)値が上昇する、血中及び尿中ミオグロビン値が上昇する等、急激な腎機能悪化を伴う場合がある |
肝機能障害 | 倦怠感が増大する、食欲が低下する、呼吸困難になる、吐き気がする、常に眠い、黄疸がでる、AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、Al-P値が上昇する、γ-GTP値が上昇する等 |
黄疸 | 嘔気がある、嘔吐する、食欲不振である、倦怠感がある、そう痒がある、皮膚や白目が黄色くなる、下痢する、全身の脱力感がある、38度~39度の発熱、ブツブツ状の発疹がでる等 |
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。
重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。
その他の副作用
その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。
副作用の部位名称等 | 副作用の名称、症状 |
---|---|
過敏症 | 発疹ができる、発赤がみられる、そう痒がある等 |
肝臓 | 肝機能異常がみられる |
消化器 | 食欲不振になる、胃部不快感がある、悪心がある、下痢する等 |
精神神経系 | 傾眠がみられる |
その他 | 低カリウム血症がみられる、浮腫ができる、血圧上昇がみられる、倦怠感がある |
過量投与 | 浮腫む、血圧が上昇する等 |
抑肝散(ヨクカンサン)について
本剤は、生薬を配合した漢方薬です。
そのため、適正な量を守っている限り、副作用は少なく、安心・安全なお薬です。
また、気分を落ち着かせ神経の高ぶりを抑制するため、肩こり等を含め、全身の筋肉の強張りを緩和する作用も期待されます。
通常、主成分は以下の素材から精製されています。
・釣藤鈎(チョウトウコウ):アカネ科カギカズラの鈎刺のある茎枝
・柴胡(サイコ):セリ科ミシマサイコまたは同属植物の根
・白朮(ビャクジュツ):キク科オケラまたはオオバナオケラの根茎
・蒼朮(ソウジュツ):キク科ホソバオケラまたはその変種の根茎
・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科マツホドの菌核
・当帰(トウキ):セリ科カラトウキの根
・川芎(センキュウ):セリ科川きゅうまたは同属植物の根茎
・甘草(カンゾウ):マメ科ウラルカンゾウまたはネンキンカンゾウまたは近縁植物の根
基本的に禁忌の方の指定はありません。
以下の方は、このお薬を利用する際には注意が必要なので、医師とご相談ください。
・著しく胃腸の虚弱な方
・食欲不振、悪心、嘔吐のある方
・妊婦の方
・妊娠している可能性のある方
・高齢の方
・小児等
以下の薬剤等と併用する際には相互作用があり、効果が増減したり、副作用を増強したりする可能性があるため、注意が必要なので、飲み合わせにつきまして医師とご相談ください。
・カンゾウ含有製剤
・グリチルリチン酸及びその塩類を含有する製剤