イリノテカンによる副作用
イリノテカンとは
イリノテカン(IRINOTECAN)とは、日本で開発された抗悪性腫瘍剤です。
主成分のイリノテカン塩酸塩水和物(Irinotecan Hydrochloride Hydrate)は、DNAの合成に必要な酵素のトポイソメラーゼを阻害することで、癌細胞の増殖を抑制します。(トポイソメラーゼ阻害薬)
様々な癌に対して利用されていますが、その分、副作用は強力です。
特に重篤な下痢は、致命的な場合もありえます。
適応症は以下の通りです。
・小細胞肺癌
・非小細胞肺癌
・子宮頸癌
・卵巣癌
・胃癌(手術不能又は再発)
・結腸、直腸癌(手術不能又は再発)
・乳癌(手術不能又は再発)
・有棘細胞癌
・悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)
・小児悪性固形腫瘍
・治癒切除不能な膵癌
上記の中でも、大腸癌や肺癌の治療では、他の薬剤と併用した際に、大事な役割を持ちます。
イリノテカンは、以下の商品名で各社から製造販売されています。
・カンプト
株式会社ヤクルト本社
・トポテシン
第一三共株式会社
・イリノテカン
あすか製薬株式会社
武田薬品工業株式会社
沢井製薬株式会社
サンド株式会社
大鵬薬品工業株式会社
テバ製薬株式会社
東和薬品株式会社
日医工株式会社
ホスピーラ・ジャパン株式会社
持田製薬株式会社
マイラン製薬株式会社
日本化薬株式会社
ファイザー株式会社
ニプロ株式会社
スポンサーリンク
主な副作用
イリノテカンの主な副作用は、以下の通りです。
・下痢する
・悪心がある
・嘔吐する
・食欲不振になる
・腹痛がする
・白血球が減少する
・ヘモグロビンが減少する
・血小板が減少する
重大・重篤な副作用
重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。
副作用の名称 | 想定される症状等 |
---|---|
脱水 | のどが渇く、小便が出ない、頭痛がする、眩暈(めまい)がする、倦怠感がある、意識を失う等 |
腸管穿孔 | 重度の広汎な腹痛がみられる、圧痛がある、腹膜炎の徴候を伴う急性腹症になる、疼痛がある、肩の疼痛に放散がみられる、悪心がある、嘔吐する、食欲不振になる、腸雑音の減弱や消失がみられる等 |
消化管出血 | 血を吐く(吐血)、黒いタール便(メレナ)がでる、貧血になる、疲れやすい、顔が青白い、脈が速くなる、低血圧になる、尿量が減少する、手足が汗ばむ、手足が冷たい、意識混濁がみられる、見当識障害がみられる、眠気がある等 |
骨髄機能抑制 | 特に症状がない場合もあり。汎血球が減少する、白血球が減少する、好中球が減少する、血小板が減少する、貧血になる、重症感染症(敗血症、肺炎等)になる、播種性血管内凝固症候群(DIC)になる |
播種性血管内凝固症候群(DIC)(はしゅせい けっかんない ぎょうこ しょうこうぐん) | 微小血栓による循環不全(腎不全、肺塞栓による呼吸困難・チアノーゼ、ショックなど)がみられる、凝固因子や血小板の減少や線溶活性化による出血症状(粘膜出血、止血不良、脳出血、皮膚出血性、血尿、消化管出血など)がみられる、中枢神経症状(意識障害がおこる、痙攣(けいれん)する、昏睡する)がみられる、臓器虚血(多臓器不全)がみられる等 |
高度な下痢、腸炎 | 下痢する、大腸炎になる、小腸炎になる、腸炎になる、水様便がでる、血便がでる、激しい腹痛がある、尿量が減少する、頻脈になる、口が渇く、血圧が低下する、意識混濁がみられる、無気力になる等、高度な下痢が持続した場合、脱水、電解質異常、ショック(循環不全)がみられる等 |
腸閉塞(イレウス) | 便秘する、腹痛がある、増強する腹部膨満感がある、吐き気がする、悪心がある、嘔吐する、排便や排ガスの途絶がみられる、間欠的または持続的な痛みがみられる等 |
間質性肺炎 | 発熱する、咳嗽(がいそう)がみられる、呼吸困難になる、胸部X線異常がある、好酸球が増多する、動悸がする、息切れする等 |
ショック | 血圧低下に伴い失神する、意識が消失する、チアノーゼがみられる、呼吸困難になる、胸内苦悶がみられる、冷感がある、嘔吐する、顔が赤くなる、痒みがある、蕁麻疹(じんましん)がでる、痺れる(しびれる)、動悸がする、息切れする等 |
急性腎不全 | 尿量が減少する、尿が赤みがかる、眼がはれぼったい、疲れやすい、からだがだるい、腹痛がする、吐き気がする、下痢する、脱力感がある、関節の痛みがある、頭痛がする、顔や手足が浮腫む(むくむ)、息苦しい、意識が低下する等 |
心筋梗塞 | 突然の左前胸部圧迫感がおこる、狭心痛がある、嘔吐する、吐き気がする、ショック状態になる等 |
狭心症(狭心症発作) | 30分程度以内の胸の広い範囲の痛みがみられる、息が詰まる様な痛みがおこる、圧迫される様な痛みがおこる、運動・坂道・階段・重い荷物を持つ等、運動量の増加に伴う胸の痛みがおこる等 |
心室性期外収縮(心室性不整脈) | ほとんど自覚症状がない、動悸がする、脈がとぶ、喉(のど)が詰まる感じ、胸部の不快感(圧迫感)がある、胸部の痛みがある、倦怠感がある、眩暈(めまい)がする、ふらつく等 |
肺塞栓症 | 突然起こる息切れ、呼吸が速い、落ち着かない、鋭い胸の痛みがする、眩暈(めまい)がする、失神する、痙攣(けいれん)する、不整脈がみられる、血痰がでる、発熱する、足首や脚のむくみがみられる、脱力感がある、チアノーゼがみられる等 |
静脈血栓症(肺塞栓症等の血栓塞栓症) | 痺れる、皮膚が変色する、血栓より遠位の浮腫ができる、皮膚の炎症がみられる、血栓性静脈炎になる、呼吸困難になる、胸痛がある、動悸がする、冷汗がでる、チアノーゼがみられる、静脈怒脹がみられる、血圧が低下する、慢性的な息切れがある、足首や脚のむくみがある、脱力感がある、意識消失がみられる等(俗名エコノミークラス症候群、ロングフライト血栓症) |
アナフィラキシー様症状 | 紅斑がでる、悪寒がする、口腔咽頭浮腫がみられる、口内の違和感がある、かゆみがある、くしゃみする、顔面紅潮がみられる、熱感がある、吐き気がする、嘔吐する、尿意がある、便意がある、そう痒感がある、全身発赤がみられる、顔面や喉頭に浮腫ができる、呼吸困難になる、血圧が低下する、喘鳴(ぜんめい)がきこえる、血管浮腫ができる、不快感がある、眩暈(めまい)がする、耳鳴がする、発汗する等 |
肝機能障害 | 倦怠感の増大がみられる、食欲が低下する、呼吸困難になる、吐き気がする、常に眠い状態、黄疸がみられる、AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、γ-GTP値が上昇する、総ビリルビン値が上昇する等 |
黄疸 | 嘔気がある、嘔吐する、食欲不振になる、倦怠感がある、そう痒がある等、皮膚や白目が黄色くなる、下痢する、全身の脱力感がある、38度から39度の発熱がみられる、ブツブツ状の発疹がでる等 |
脳梗塞 | 急な片側手足や顔の麻痺がおこる、痺れる(しびれる)、意識障害がみられる、言語障害がみられる、頭痛がする、視力障害がみられる等 |
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。
重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。
その他の副作用
その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。
副作用の部位名称等 | 副作用の名称、症状 |
---|---|
呼吸器 | 呼吸困難になる、PaO2が低下する、気管支炎になる、上気道炎になる、咽頭炎になる、鼻炎になる、咽頭痛がある、咳嗽(がいそう)がきこえる |
皮膚 | 脱毛がみられる、色素沈着がみられる、浮腫ができる、発赤がみられる、帯状疱疹ができる、粘膜炎になる |
精神神経系 | しびれ等の末梢神経障害がみられる、頭痛がする、眩暈(めまい)がする、精神症状がみられる、意識障害がみられる、傾眠がみられる、興奮や不安感がある、不穏になる、痙攣する、耳鳴がする、味覚異常になる、抑うつ状態になる、目がかすむ、不眠になる、振戦がみられる、構語障害がみられる |
過敏症 | 発疹ができる、そう痒感がある、蕁麻疹(じんましん)がでる |
循環器 | 頻脈になる、心電図異常がみられる、血圧が低下する、動悸がする、不整脈がみられる、徐脈がみられる、心房細動がみられる、高血圧になる |
消化器 | 悪心がある、嘔吐する、食欲不振になる、腹痛がする、食道炎になる、吐血する、腸管運動亢進がみられる、しゃっくりがでる、腹部膨満感がある、口内炎ができる、胃潰瘍になる、胃や腹部の不快感がある、胃炎になる、消化不良になる、便秘する |
肝臓 | AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、ALP値が上昇する、ビリルビン値が上昇する、LDH値が上昇する、γ-GTP値が上昇する |
腎臓 | 腎機能障害がみられる(BUN値が上昇する、クレアチニン地が上昇する等)、クレアチニンクリアランスが低下する、電解質異常がみられる、蛋白尿がでる、血尿がでる、尿沈渣異常がみられる、乏尿がみられる |
その他 | 倦怠感がある、発熱する、熱感がある、発汗する、顔面潮紅がみられる、疼痛がある、腰痛がある、腹水がでる、鼻汁がでる、好酸球が増加する、総蛋白が減少する、アルブミンが減少する、カルシウム異常がみられる、尿酸異常がみられる、尿ウロビリノーゲン異常がみられる、悪寒がする、胸部不快感がある、胸痛がある、関節痛がある、糖尿がでる、脱水がみられる、コリン作動性症候群になる、筋痛がある、鼻出血がある、脱力感がある、無力症になる、疲労がある、体重が増加する、体重が減少する、白血球分画の変動がみられる、CRP値が上昇する、注射部位反応(発赤する、疼痛がある等)がおこる、血管炎になる、流涙がみられる、LDH値が低下する、白血球が増加する、血小板が増加する |
イリノテカンについて
本剤は日本で開発されたお薬です。
直物アルカロイドの誘導体で、日本国内で様々な癌に対し有効であるため広く利用されています。
効果はありますが、副作用も強いのが特徴です。上記でも記載しましたが、特に重篤な下痢は致命的な場合があります。
持病やアレルギーのある方は事前に医師とご相談ください。
特に注意が必要なのは、本剤利用後3日程度の間に発現する腸閉塞です。十分な注意が必要です。
以下の方は、基本的に禁忌なので、本剤の利用はできません。
・骨髄機能抑制のある方
・感染症を合併している方
・下痢(水様便)のある方
・腸管麻痺のある方
・腸閉塞のある方
・間質性肺炎の方
・肺線維症の方
・多量の腹水のある方
・多量の胸水のある方
・黄疸のある方
・アタザナビル硫酸塩を利用中の方
・本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある方
以下の方は、このお薬を利用する際には注意が必要なので、医師とご相談ください。
・肝障害のある方
・腎障害のある方
・糖尿病の方
・全身衰弱が著しい方
・高齢の方
・小児等
・妊婦の方
・妊娠している可能性のある方
・授乳婦の方
以下の薬剤との併用は、基本的に禁忌です。ご利用されている方は、医師とご相談ください。
・アタザナビル硫酸塩
・レイアタッツ
以下の薬剤等と併用する際には相互作用があり、効果が増減したり、副作用を増強したりする可能性があるため、注意が必要なので、医師とご相談ください。
・他の抗悪性腫瘍剤
・放射線照射
・末梢性筋弛緩剤
・CYP3A4阻害剤
・アゾール系抗真菌剤(ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール等)
・マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)
・リトナビル
・ジルチアゼム塩酸塩
・ニフェジピン
・モザバプタン塩酸塩等
・グレープフルーツジュース
・CYP3A4誘導剤
・フェニトイン
・カルバマゼピン
・リファンピシン
・フェノバルビタール等
・セイヨウオトギリソウ
・St. John’s Wort: セント・ジョーンズ・ワート含有食品
・ソラフェニブトシル酸塩
・ラパチニブトシル酸塩水和物
・レゴラフェニブ水和物