イレッサによる副作用
イレッサとは
イレッサ(Iressa)とは、分子標的薬に分類される、肺がんを治療するためのお薬です。
通常、他の抗がん剤による治療効果が見られず、手術できない非小細胞肺がんや、再発した非小細胞肺がんに対して利用されています。
比較的、新しい抗がん剤で、従来のお薬と比較し、副作用も少ないと言われております。
主な成分は、ゲフィチニブ(Gefitinib)で、癌細胞が増殖する際に必要な酵素(チロシンキナーゼ)の活動を分子レベルでブロックすることにより抑制します。
スポンサーリンク
主な副作用
イレッサの主な副作用を、症例の報告の多い順に記載すると、以下の通りです。
・発疹ができる
・肝機能異常がある
・下痢する
・皮膚が乾燥する
・急性肺障害、間質性肺炎になる
重大な副作用としては、特に、間質性肺炎や急性肺障害には注意が必要です。死亡例も複数報告されております。
飲み始めて、4週間以内に、空咳、息切れ、呼吸がし辛い、発熱する、呼吸が速くなる等の肺に関する症状が発現した場合には、速やかに医師の診察を受診してください。
重大・重篤な副作用
重大・重篤レベルの副作用としては、次の表の症状が想定されます。
副作用の名称 | 想定される症状等 |
---|---|
急性肺障害(ALI) | 呼吸困難になる、咳がでる、胸痛がする、頻呼吸になる、頻脈になる、補助呼吸筋を使用している、チアノーゼ性または斑状の皮膚所見がある、異常な呼吸音(断続性ラ音、いびき音、は喘鳴)がする等 |
間質性肺炎 | 発熱する、咳嗽(がいそう)がでる、呼吸困難になる、胸部X線異常がある、好酸球増多になる、動悸がする、息切れする等 |
重度の下痢 | 水様便がでる、頻回の下痢がある、血便がでる、激しい腹痛がある、尿量が減少する、頻脈になる、口渇になる、血圧が低下する、脱水症状がある、意識が混濁している、無気力である等 |
脱水 | のどが渇く、小便が出ない、頭痛がする、眩暈(めまい)がする、倦怠感がある、意識を失う等 |
中毒性表皮壊死融解症(Toxic EpidermalNecrolysis:TEN) | からだがだるい、関節の痛みがある、皮膚が焼けるように痛む、全身の赤い斑点と破れやすい水ぶくれ(水疱)ができる、発熱する、食欲不振になる、口内が荒れる等 |
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群) | 高熱がでる、陰部が痛む、関節の痛みがある、ひどい口内炎ができる、唇や口内が爛れる(ただれる)、発熱、皮膚がまだら模様に赤くなる、皮膚に水脹れが出る(各種皮膚障害)、中央にむくみをともなった赤い斑点ができる、赤い発疹ができる、まぶたや眼の充血がある、結膜がただれる、食欲不振になる、からだがだるい等 |
多形紅斑(たけいこうはん) | 手の甲・足の甲・肘・膝などの四肢伸側に左右対称に多発する円形の紅斑がみられる、発熱する、痛みがある等 |
肝炎 | 白目や皮膚が黄色くなる、高熱がでる、倦怠感が増大する、黄色い尿がでる、淡黄色の便がでる等 |
肝機能障害 | 倦怠感が増大する、食欲が低下する、呼吸困難になる、吐き気がする、常に眠い、黄疸がでる、AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する、γ-GTP値が上昇する、総ビリルビン値が上昇する等 |
黄疸 | 嘔気がある、嘔吐する、食欲不振である、倦怠感がある、そう痒がある、皮膚や白目が黄色くなる、下痢する、全身の脱力感がある、38度~39度の発熱、ブツブツ状の発疹がでる等 |
肝不全 | 黄疸がでる、出血傾向になる、腹水がでる、脱力感がある、肝性脳症になる、全身の健康状態が悪化する、吐き気や食欲不振がある等 |
血尿 | 赤い尿がでる、尿検査の結果赤血球が混合している、排尿痛がある、頻尿になる、残尿感がある、下腹部周辺の痛みがある、無症状等 |
出血性膀胱炎 | 血尿がでる、残尿感がある、微熱がでる、尿閉になる、膀胱萎縮する等 |
急性膵炎 | 上腹部痛(みぞおち、左上腹部、背部等)がある、吐き気がする、嘔吐する、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)がある、食欲不振になる、発熱する、意識障害になる、ショック状態(蒼白、血圧低下など)になる、押されると痛みが強い(圧痛)、押されると腹部が硬くなる(筋性防御(きんせいぼうぎょ))等 |
消化管穿孔(しょうかかんせんこう) | 急激な腹痛がある、ショック症状になる、遊離ガスが横隔膜直下に溜まる、腹膜炎になる、大量出血する、敗血症になる等 |
消化管潰瘍 | 食後の腹痛が長い、腹部が張る、吐き気がする、嘔吐する、下痢する等 |
消化管出血 | 血を吐く(吐血)、黒いタール便がでる(メレナ)、貧血になる、疲れやすい、顔が青白い、脈が速くなる、低血圧になる、尿量が減少する、手足が汗ばむ、手足が冷たい、意識が混濁する、見当識障害がある、眠気がする等 |
上記の表にある様な症状が現れた場合には、速やかに医師、又は薬剤師へ報告し、対応を相談してください。
重大・重篤な症状を伴う副作用は、通常滅多にあるものではありません。しかし、服用を開始した際の初期症状には、注意が必要です。
その他の副作用
その他の副作用としては、以下の様な症状が報告・想定されています。
副作用の部位名称等 | 副作用の名称、症状 |
---|---|
全身 | 無力症になる、疲労する、倦怠感がある |
皮膚 | 発疹ができる、そう痒症になる、皮膚が乾燥する、皮膚に亀裂ができる、ざ瘡等の皮膚症状がある、爪の障害がある、脱毛する、皮下出血がある、皮膚血管炎になる |
眼 | 結膜炎になる、眼瞼炎になる、角膜炎になる、角膜びらんがある、眼乾燥になる |
消化器 | 下痢する、嘔気がある、嘔吐する、食欲不振になる、口内炎になる、口内が乾燥する |
血液 | 白血球が減少する、血小板が減少する |
肝臓 | 肝機能障害(AST(GOT)値が上昇する、ALT(GPT)値が上昇する等)になる |
過敏症 | 血管浮腫ができる、蕁麻疹(じんましん)がでる |
その他 | 鼻出血がある、INR値が上昇する、出血する、クレアチニン値が上昇する、蛋白尿がでる、発熱する |
イレッサについて
発売当初、イレッサによると言われる急性肺障害や間質性肺炎(肺線維症)が多発(約5.8%)し、死亡例も多数報告(約2.3%)されたため、追跡調査が行われました。
結果として、間質性肺炎等の重大な副作用が発現しやすい方(間質性肺炎あり、喫煙歴あり、体力低下)、イレッサが効きやすい方(女性、腺がん、喫煙歴なし、東アジア地域の方)等が判明し、現在では、遺伝子調査等を含め、医師と相談の上、利用を決める様になっております。
次の方は禁忌ですので、利用できません。
・本剤等に対してアレルギーのある方
次の方は原則禁忌ですので、原則的には利用できません。
・妊娠しているか、その可能性のある方
・授乳婦の方
また、以下の薬剤や食品を利用されている方は、相互作用に注意が必要です。
・CYP3A4誘導剤(本剤の作用を減弱)
フェニトイン、カルバマゼピン、リファンピシン、バルビツール酸系薬物、セイヨウオトギリソウ(St.John’sWort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等
・CYP3A4阻害剤(副作用が重くなる)
アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール等)、マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン等)、リトナビル、インジナビル硫酸塩エタノール付加物、ジルチアゼム塩酸塩、ベラパミル塩酸塩等、グレープフルーツジュース
・プロトンポンプ阻害剤、H2-受容体拮抗剤( 本剤の血中濃度低下 )
オメプラゾール等、ラニチジン塩酸塩等
・ワルファリン(INR上昇や出血あり)
持病のある方は、事前に医師と相談してください。
イレッサは、アストラゼネカ株式会社により、製造販売されております。